パッシブデザインの5原則
私たちがパッシブデザインによって実現したい環境を温度で表現すると次のようになります。
- 夏:自然室温で35℃以下
- 冬:朝6時の自然室温で16℃以上
いずれもエアコン無しの場合での設定です。したがって、夏や冬は必要な時に少しだけエアコンを稼働することで、とても快適な温熱環境となります。
また、室内にまんべんなく自然光が入る工夫を行うことで、日中は照明設備に頼ることなく過ごせる明るい室内環境も実現したいと考えています。
「質の高い室内環境」と「省エネルギー」。これらを実現するためには、これからお話しする5つの項目についてしっかりと検討していくことが重要です。
①断熱(冬のパッシブデザイン)
冬の暖かさを実現する上で断熱はとても重要です。断熱性能が高まることで、内外温度差が大きくなり、暖房室と非暖房室の温度差も小さくなります。ただし、「断熱性能の向上=夏涼しく」という単純な図式にならない点にも注意が必要です。また、断熱性能とともに、気密性能の向上も考慮することで、暖かさが持続する住まいとなります。エヌテックでは、断熱性能や気密性能を表す数値に対して具体的な目標値を定めて設計を行います。
|
国の基準 |
当社の性能 |
解説 |
UA値 |
0.87W/㎡K |
0.46W/㎡K以下 |
この数値が小さいほど、建物全体の断熱仕様が良いことを示します。 |
Q値 |
(2.7W/㎡K) |
1.6W/㎡K以下 |
この数値が小さいほど建物全体の断熱・保温性能が高いです。UA値よりも実際の冬の暖かさの指標になります。 |
C値 |
(5c㎡/㎡) |
1.0c㎡/㎡以下 |
この数値が小さいほど建物全体の隙間が少ないことを示し、冷たい空気の流れが感じにくく、暖房の効果が高まります。 |
②日射熱利用暖房(冬のパッシブデザイン)
冬の日射を室内に取り入れることで、室温が上昇し、断熱性能の向上と相まって、夜間も暖房効果が持続するという現象が起こります。日射熱によって暖められた部屋の快適感は高く、暖房エネルギーの削減という省エネ効果も得られます。エヌテックでは、一邸ごとに日照のシミュレーションを検討し、日射取得性能を表す数値に対して具体的な目標値を定めて設計を行います。
|
国の基準 |
当社の性能 |
解説 |
ηAH値 |
無し |
2.5以上 |
この数値が大きいほど、日射取得性能が高いと言えます。 |
③日射遮蔽(夏のパッシブデザイン)
日射を遮蔽することは、夏の涼しさの実現へとつながります。そのためには、
- 窓ガラスと窓まわりに工夫して、窓から入る日射を防ぐ
- 断熱によって、屋根や外壁から室内に入る熱量を少なくする
- 通気層や換気によって、屋根や外壁から室内に入る熱量を少なくする
- 屋根や外壁の材料の仕上げ材の選択によって、屋根や外壁に当たった日射をはじく
- 植栽や外構の工夫によって、外壁に当たる日射量を少なくする
といった項目を検討しますが、最も重要なものが「窓から入る日射を防ぐ」です。エヌテックでは、日射遮蔽を表す数値に対して具体的な目標値を定めて設計を行います。
|
国の基準 |
当社の性能 |
解説 |
ηAC値 |
2.8 |
1.0以下 |
この数値が小さいほど、日射遮蔽性能が高いと言えます。 |
④自然風利用(夏のパッシブデザイン)
自然風を利用する設計の狙いは、「涼感を得る」ことと「排熱する」ことです。その大前提として、室温よりも外の気温が低いときに行うことがとても重要です。ただし、設計的な工夫によって、自然風利用ができる建物であっても、タイミングよく窓を開けるなどの住まい手の実践がなければその効果は得られません。自然風利用の具体的な手法としては、「全方位通風」「ウィンドキャッチャーの活用」「立体通風」などがあげられます。エヌテックでは、これらの手法を意識した設計を行っています。
⑤昼光利用(通年のパッシブデザイン)
日射熱利用暖房では、太陽の熱を活用しますが、昼光利用では太陽の光を利用します。夏や冬だけに限らず、一年中を通して日中はできるだけ照明器具に頼らず、明るい室内空間を実現するのがこの手法です。窓を設け自然光を採り入れる「採光」と、建物に入った光をできるだけ奥に導く「導光」を考えて設計を行っています。