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第12回 コンクリートの強度

今回は、僕が今もよく分からない事
―基礎工事で使うコンクリートの強度は何の基準で見れば良いか?―
と言う事を中心に書きたいと思います。

家の建築に関する基準は、建築基準法を最低基準として、住宅関連法(住生活基本法、住宅品質確保法、長期優良住宅普及促進法、住宅瑕疵担保履行法等)等に対応した基準があります。

この他にも、住宅保証機構の『まもりすまい保険 設計施工基準・同解説』等と言った保険適用下で遵守しなければならない基準や、住宅金融支援機構の『木造住宅工事共通仕様書』(良く聞く公庫基準。以下長いので公庫基準とします)と言ったもの、更には建築業者等が独自に定めた基準と言うものもあると思います。

ここまでで既に混乱しそうですが、とても全てに目を通す事は出来ません。
Ginger Houseの場合、長期優良住宅の認定と住宅性能評価を受けるので『評価方法基準』と『日本住宅性能表示基準』(何れも国交省告示)、あんしん住宅瑕疵保険を利用するので『あんしん住宅瑕疵保険 設計施工基準』、SE構法なのでこの基準は満足しなければならないと思います。

ところで住宅の基礎は、H12年から建築基準法で鉄筋コンクリート造と定められています。
この鉄筋コンクリートには、土木分野では土木学会の『コンクリート標準示方書』(以下示方書)、建築分野では日本建築学会の『建築工事標準仕様書・同解説 JASS 5 鉄筋コンクリート工事標準仕様書』(以下JASS 5)という、コンクリート工事の代表的な施工標準があります。

更にSE構法には、『基礎構造標準仕様書』(以下SE構法の基準)というものがあります。
これはSE独自の部分を除けばほぼJASS 5に則したものです。

問題と思うのは、公庫基準や瑕疵保険の基準とJASS 5とでは、特にコンクリートの強度の扱いにかなりの違いがある事です。

この表は自分の為に必要な部分を抜き出して無理やり纏めた(JASS 5に合わせた)もの、と言う事をお断りして、このまま簡単に解説してみます。

コンクリートに関して、単に『強度』と言えば圧縮強度の事を指します。
コンクリートの強度は材料の調合(建築では調合/土木・JISでは配合)によって変わりますが、材料は工場で混ぜて(建築では調合/土木・JISでは配合)現場まで運び、そこで流し固める(打設)ので、固まった際の強度にばらつきが出ます。

つまり、生コンの強度は「固めてみなければ分からない」所があるのですが、使う側としては設計上必要な強度があるのでこれでは困ります。

それで生コンの製品規格のJIS A 5308では、『荷卸し時点での』生コンの強度が、規定の条件を満足する事を求めています。
よく見聞きする『呼び強度』は、JIS A 5308の「4.品質」の規定に示されている条件で『保証される』強度の事です。

Ginger Houseの基礎の打設にあたっては、ポンプ車のホースの先で採取したコンクリートを型に入れたものの材齢28日での強度を測っていますが(強度試験)、これはコンクリートの品質を確認する性格の試験です。
固まるまでの条件は違うものなので、この供試体の強度と基礎の(構造体)コンクリート(構造体)の強度は一致するとは限りません。

JASS 5では(だけ)、材齢28日の標準養生供試体の強度と材齢91日の構造体から抜き取ったコア供試体の強度の差から求められる『構造体強度補正値28S91』と言うものを加えます。
この為、JASS 5では『呼び強度≧設計基準強度(耐久設計基準強度)+構造体強度補正値』となります。
(設計基準強度とは構造物の構造計算において基準とした圧縮強度の事で、耐久設計基準強度とは供用期間に応ずる耐久性を確保するために必要とされる圧縮強度の事です。)

Ginger Houseの基礎のコンクリート強度は、設計図書の中で呼び強度27N/mm2と明記されていました。
これは法や瑕疵保険の基準、公庫の基準としては問題ありません。
一方でSE構法の基準になると、構造体強度補正値を差し引く必要があるので、6N/mm2を差し引いた21N/mm2が、設計基準強度か耐久設計基準強度と言う事になります。

SE構法の設計基準強度は21N/mm2でこちらは問題ありません。
もし下回ると構造計算が成り立たなくなります。
一方で耐久設計基準強度は、建築業者が決めるものでSE構法としても問題ありません。
ただ、値としては微妙です。

耐久性と強度の関係は改めて書きたいと思いますが、JASS 5では両者の関係は次の様に書かれています。

住宅の基礎は薄い事等を考えると、大規模補修をして供用限界まで使うのは難しいのではと思います。そうすると家の基礎の寿命は大規模補修不要期間と考えて差し支えないと思いますが、21N/mm2を耐久設計基準強度として見た場合、寿命は30~65年の間と言う事になります。

ここで、公庫基準と瑕疵保険の基準が何の為に定められているかと言う事ですが、住宅金融支援機構の基準でフラット35の技術基準でもある事を考えると、家の耐久性については、(担保として)35年もてば良いと言う考えが出来そうです。
同じく瑕疵保険の基準では、30年もてば十分そうです。

すると気になるのが長期優良住宅の認定基準です。
該当する基準は「長期使用構造等とするための措置及び維持保全の方法の基準(平成21年国土交通省告示)」だと思うのですが、木造住宅と鉄骨造についてはコンクリートに一切触れていません!

つまり第3者機関が審査したから安心とか、指摘が無かったという事は、そもそも審査基準が違うのでこの点の解決にはなりません。

それでJASS 5の適用の是非は別にして、耐久設計基準強度については、長期優良住宅を建てるのであれば気になる所だと思います。
知ってしまうと長期供用級である30N/mm2を目指したい所だと思います。

実際の施工では、呼び強度30N/mm2で打設され、強度試験の結果はスラブ40.9N/mm2、立上部33.7N/mm2でした。

各々の実際の強度は、構造体強度補正値の考え方を当てはめれば、-6N/mm2差し引いた34.9と27.7N/mm2と言う事になると思います。
この値は、これを下回る確率が5%と言う値ですので、立上についても平均値では31N/mm2ある計算になる様です。

結果には満足していますが、この事は契約前に気付くべき事でした。
これから家を建てる人で耐久設計基準強度が気になる様でしたら、依頼先に相談されてみてはと思います。

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