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第14回 基礎の耐久性とその品質

第12回で、JASS5には耐久設計基準強度と言う物がある事を書きました。
これは、コンクリートの中性化によって鉄筋が腐食し始める危険性の生じる確率を基に、4段階の水準を設けたものです。

ここで出て来る中性化とは、コンクリート中の水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素と反応して、コンクリートのpHが下がる事です。
中性化によってコンクリートのpHが下がると、強アルカリ下では(一定量以上の塩化物イオンが無ければ)錆びない鉄筋が、普通に錆びる様になります。

ギチギチに詰まったコンクリートの中で鉄(鉄筋)が錆びて膨張すると、コンクリートは中から押し広げられ、コンクリートの組織を引き離す方向に力が掛かります。
鉄筋とコンクリート表面の間の部分(かぶり)には鉄筋が無いので、引張りに弱いコンクリートだけでこの力を受ける事になります。

この時、かぶり部分の引張強度を鉄筋の膨張圧力が上回れば、かぶり部分がひび割れますが、腐食が進行してより大きな力が掛かれば、かぶりの部分がごっそり剥げ落ちる事もあります。
(ちなみに上の写真は工事の為に表面のコンクリートを除去したものです)

家の基礎は、コンクリートの厚みが薄く鉄筋が断面中心部にある事が多いので、かぶりが剥落すれば、その部分の基礎断面の約半分が欠損する事になります。 早期に気付けば補修で対応出来るかもしれませんが、普段外から見える部分が少ないので、場所によっては深刻な状況になっていても気付かないかもしれません。

鉄筋コンクリートの耐久性を考える上で特に重要と考えられるのは、コンクリートの厚みと緻密さです。
どちらも強度に関係するものですが、コンクリートや鉄筋に悪影響を及ぼす二酸化炭素等の物質は、コンクリートの組織の極小さな隙間(毛管空隙)を通って移動するので、耐久性の面でも重要になります。
また、中性化はコンクリート中の隙間に存在する『水』を介して起こる反応なので、隙間が少ないほど中性化の進行は遅くなります。

『耐久設計基準強度』の概念は、鉄筋コンクリートの耐久性とコンクリートの強度に関係性がある事によりますが、コンクリートが緻密でも、コンクリートの中を移動する物質にとって『抜け道』となるものが作られる事があります。
それは、セメントが行き渡らずに作られる空隙やひび割れといった大きな隙間です。

そもそも緻密さの方も疑わしいかもしれません。
今の日本で製造されるセメントは、昔日本で製造されていたものや現在欧州で製造されるものに比べて、強度がかなり高いからです。
これは緻密に造らなくても強度が出ると言う事です。

日本には、100年前に造られて、今も健在の鉄筋コンクリート造の構造物が幾つか残っています。
当事のセメント強度は今の半分程度しか無く、生コンも現場練りです。 鉄筋となるものは身近にあったもので代用されている例もあり、使われた道具も原始的なものです。
そもそも鉄筋コンクリートで造る事が手探りに近い時代なので、知識も経験も乏しかったと思います。

当時造られたコンクリートは至極丁寧に造られた、と言う事が言われていますが、当時は設計強度を確保する為には、『緻密に』『厚く』造る他に手段が無かっただけで、それが耐久性の面でも重要だったと言う事ではないかと思います。

これに対して、今は材料も技術も進歩した事で、昔ほど手間隙掛けなくても必要な強度が確保し易くなっています。
これは、今の様に鉄筋コンクリートが現場で『大量生産』される状況では重要な事です。
施工に求めるハードルが高すぎると、造れる人が限られて大量生産出来なくなるか、欠陥品が余に溢れる事になるからです。

そして誰でも簡単に造れる様になると、良い材料を用い、適切な方法で、丁寧に造ると言う、極めてあたり前の事が難しくなるのです。

家の建築では沢山の材料が使われますが、今やその殆どが商品として作られた製品です。 おそらく重要な部材では基礎だけが、これを使う建築業者が現場で『製造』した製品だと思います。

鉄筋コンクリートの製造は、同じ人が製造しても全く同じ物はまず造れないと思えるくらい難しいものですが、設計強度を満足する事については難しい事ではありません。

それでもし建築業者が、家が建ちさえすれば十分と考えた場合、基礎に何を求めるでしょうか?
強度を満足する事が難しくなければ、出来るだけ安く速く造る事を求めると思います。
もっと言えば、難しくないと思う故に鉄筋コンクリートの事など殆ど勉強しないでしょう。

家の基礎に関して、法や施工標準等でしなければならないとされる事はあまり多くは無いのですが、自分で造って自分で使う部材なので、品質管理が行われているかさえ怪しい部材です。
この点で、商品として取引される他の部材とは大きく違うのです。

僕は、建物は素晴らしいが基礎は最低、と言う事は受け容れられないので、基礎を適当に作ってしまう建築業者に家の建築を頼みたくはありませんでした。
周りを見れば分かると思いますが、型枠が取れてすぐに上棟してしまう建築業者も沢山あるのです。

建築業者が長持ちする良い家を本当に建てたいと考えるなら、基礎(地盤も)に手を抜く事は有り得ないですし、基礎を台無しにする様な行為もしないものと思います。

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