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家づくりにお勧めの一冊

第5,468回 設計の谷口です。

本日は、これから家づくりをお考えの方にお勧めな本を一冊、ご紹介致します。

「建築家は住まいの何を設計しているのか」
 著:藤山和久、出版:筑摩書房、定価:1800円+税

著者の藤山和久さんは、1973年に山口県で生まれ、建築専門誌「建築知識」の元編集長です。
編集者として、建築・インテリア・家づくり関連の書籍に多数携わられ、例えば「住まいの解剖図鑑」「片づけの解剖図鑑」「間取りの方程式」「エアコンのいらない家」などを担当されているので、もしかしたらこのブログの読者の皆様も一度は読んだことのある本があるかもしれませんね。

「建築家は住まいの何を設計しているのか」は、ウェブちくまの連載「もしも家を建てるなら」を加筆修正のうえ再編集した書籍で、住宅設計に関する小話がたくさん詰まった内容になっています。

全て読み終えた感想としては、私自身がこれまで住宅の設計をしてきた職業柄か、ほとんどの内容に「そうそう!」と大きくうなづく場面が多々ありました。

例えば、『天井が低くてなぜ悪い<高さ>』の項目では、低い天井を良しとする理由として
①温熱環境が効率化される
⇒天井を低くすると部屋全体の気積(空間のサイズ)が小さくなり、冷暖房の効率が良くなる。
②家のかたちがキマる
⇒建物全体の高さが低くでき、住宅全体のフォルムが良くなる。
 本文中の「室内空間の確保に血道を上げた軽自動車のようなボックスタイプではなく、流麗なスタイルを追求したクーペのようなデザイン」という例えには、なるほど!と感心しました。
③階段の勾配をゆるくできる
⇒天井が低いと階段の段数を減らせたり、勾配もゆるくできるので昇り降りがラクになる。
④建具が大仰にならない
⇒建具を天井いっぱいにすると、引戸をあけ放した時に部屋と部屋とが連続して一体感が生まれるが一方で、建具の存在感が出たり、反りも大きくなって使っているうちに建てつけが悪くなりやすい。
⑤サッシがぴったりハマる
⇒天井が2200ミリ以下だと、窓のサッシも天井いっぱいまでの高さで統一でき、外への広がりも生まれる。
といった5つが挙げられており、家づくりのお考えの方にもとても参考になる内容なのではと感じました。

また、『豊かさを広げる技術<動線>』の項目では、近年大流行している家事ラク動線に警鐘を鳴らしており「効率的ではない間取り=悪」として退けるのではなく、動線をあえて非効率にすると住まいの豊かさは何倍にもふくれあがるとアドバイスしています。
動線計画の話題で登場する「距離」というものは、あくまで相対的なものであって、例えば街中に建てる小ぶりな戸建住宅であれば、動線をもっと短く効率化してほしいと要望するのは神経質すぎるところがあるのではとの指摘にも、うなづけるものがありました。
効率化という機能性を高めるためのネジを少し緩めると、それまで見えていなかった景色も見えてくる。
そんな豊かさのある設計にも挑戦していきたいと私も共感いたしました。

他にも、むやみに掃き出し窓を設置する危うさや、現代の住宅で消えつつある半屋外空間の魅力なども、普段から私達も注意している事柄について再確認ができ、これから家づくりをお考えの方にもたくさん参考にしていただきたい内容が詰まった良本となっております。

私自身のことを建築家だとは思っていませんが、建築家の方々から学ぶものはたくさんありとても刺激的です。
本のあとがきに、『優れた建築家は、みな優れた人間観察者でもある』と書かれてありました。
まだまだですが、私も優れた人間観察者となれるよう努めていきたいと思います。

 

 

 

 

 

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