秋田にて
第6,146回 設計の谷口です。
3月の話ですが、広島県内の工務店仲間と一緒に秋田県へ出張に行ってきました。
目的は、「もるくす建築社」さんの視察です。
私がもるくすさんを知ったのは、2015年の第一回 日本エコハウス大賞で、みごと大賞を受賞された時でした。
秋田県という、とくに冬場の厳しい環境において、文句なしの建物性能を確保しながら圧倒的なデザインセンスによって唯一無二の建築を手がけられていらっしゃる印象が衝撃的でした。
志を同じとする広島県の工務店仲間から今回の視察のお誘いを受け、ぜひということで秋田まで飛行機を乗り継ぎ行ってまいりました。
最初に見学させていただいたのは、「広面の家」。

最初から圧巻のお住まいで、工務店仲間も興味津々で建物に見入っていました。
お施主様ともお話しすることができ、どうしてもるくすさんに依頼することになったのかを尋ねたところ、もるくす建築社の代表でいらっしゃる佐藤さんのご自邸を見学した時に「もう、こんな感じでお願いします」という話になったとのことでした。
設計者としては、これほど嬉しい話はありません。
私も少しでもそのようなご依頼が増えるよう努めなければと感じました。
続いて見学させていただいたのは、「Y-HOUSE」。

こちらは昨年の夏に完成したばかりのお住まいとのことで、初めての冬を経験して、お施主様も大変ご満足の様子でした。
建物形状はシンプルな総二階なのですが、高低差や空間のバランスの取り方など、中に入るとシンプルな形状の雰囲気は全く感じられず、これこそが設計力の成せる技なのかと感心いたしました。
3件目は、施工中の現場を見学させていただきました。
こちらでは、木質断熱材の吹き込み工法やパネルタイプのものなどが使われており、興味深かったのは佐藤さんが粘土パネルと呼んでおられた土壁状のパネル材に挑戦していたりと、木や土といった素材をふんだんに活用されている点でした。
3件だけでもお腹一杯の様相でしたが、その日の夜はこれまたもるくすさんが手掛けられたレストラン「おしゃべりきのこ」でレクチャー&懇親会となりました。

レストランのオーナーもとてもフランクな方で、ついついお土産にフレッシュなワインを購入してしまいました。
佐藤さんを囲む形で色々とお話しをしましたが、その独自性や精神性を話の節々に感じ、建築を通して思想を実現する力に長けた魅力的な人柄を、おいしい料理と一緒に堪能させていただきました。
次の日は、「六郷大町の家」の見学から始まりました。
こちらは、秋田アーキテクトプロジェクト「MOKU-SUIー木粋ー」として計画された建物のうちの1棟です。
秋田の環境や住まい方を熟知した建築家と小田島工務店さんとがコラボレーションして、「秋田で暮らし続けること」をテーマにした住宅を提供するプロジェクトだそうです。
当日は、小田島工務店さんのご厚意もあり、全3棟を全て見学させていただくことができました。

中央がもるくすさんの建物で、床面積約20坪のコンパクトな平屋です。
伝統的な田の字型平面をベースに、現代の暮らしに対応した機能も充実しており、終の棲家としてもピッタリだなぁと感じました。
ちなみに、写真の左側の建物は、秋田の大御所建築家 西方里見さん設計でこちらも内部まで見学させていただきました。
最後は、もるくす建築社さんのオフィス「美郷アトリエ」を訪問。

建築に携わる身としては、惚れ惚れする所がたくさんあってとても素敵な仕事環境だなぁと感じました。なんでも気さくに答えて下さる佐藤さんに、広島のメンバーもたくさん質問を投げかけていました。
今回の秋田訪問では、伝統的な日本の住まいのエッセンスと現代における技術とのバランスの取り方に対して深く考えさせられる、大変貴重な機会をいただけたと感じています。
人口減少時代を迎えた日本。これからの世代を生きる子供たちへのメッセージをどう表現していくのか、地域工務店としての思想を表現していかなければなりません。